「光（４）」の感想

光 4 (4) IDコミックス ZERO-SUMコミックス

　私が注目していた漫画の一つ、「光」の最終巻です。ネタばれ（？）を含むので以下“続きを読む”で。

　えー、最終巻ですが完結していません。打ち切りです。ラストはものすごい投げっぱなしです（詳しくは ここを参照）。
　確かにこの作品が人気を得られず打ち切りになるのは仕方ないのかもしれません。なぜならどうやっても 気持ちよくなれない、むしろイヤな気持ちにしかなれない作品だから。

　日常の中の何気ない言葉や行動から人間のもつ醜悪な面をさらけ出すような、尖ったナイフのような漫画 。「アニメがお仕事！」（石田敦子）に近いようで全く違う、痛くて気持ち悪い作品。
　こんなものは広く受け入れられなくても当然でしょう。
　でも私はこの作品が好きでした。たとえフィクションとはいえ、人間の醜さを認識させてくれる作品はそ れだけで貴重だと思っています。

　この作品の面白い点の一つが、日常と非日常の対比。対比といっても全く違うドラマが描かれるのではな く、日常での各人物の内面の醜さを執拗に描き、一方の生死のやりとりをする非日常の場面では単なる日常 の延長のような牧歌的な雰囲気が残るところ。敵対している相手に思わず「えっ、じゃあごめん」なんて言 ってしまう辺り、不思議なリアルさを感じます。
　普段人の生き死にをあまり実感せずに生きている私たちが突然生死のやりとりをしなければならなくなっ たら？生死を実感しないまま殺し、殺される。そのシュールな状況にも適応していく登場人物達。この先が どうなるか知りたかった。