「D.Gray−man(1〜7)」の感想

D.Gray-man (1)    ジャンプコミックス

D.Gray-man (1) ジャンプコミックス

D.Gray-man 7 (ジャンプコミックス)

D.Gray-man 7 (ジャンプコミックス)

 かなり久しぶりに買った少年ジャンプの漫画です。結構以前から表紙に惹かれていて、普通ならその時点 で1巻を持ってレジに直行するのですが、いつの頃からか少年ジャンプの漫画に偏見を持っていてためらっ ていました。しかし最近友人から借りて読んでいる「NARUTO」(岸本斉史)はなかなか良くできた作 品で、「Death note」(大場つぐみ小畑健)などは人気はあるけどジャンプらしくないと評判 だったりと、昔私が読んでいた時代とはもう違うのかもと思い買ってみることにしました。


 基本的には絵が全てと言って良いでしょう。「KING OF BANDIT JING」(熊倉裕一) の熊倉裕一直系のテイストに、ゴシック・耽美な雰囲気を持ち込んだような画がとても魅力です。それだけ で買う価値はあったと思います。

 話の方は、はっきり言えばいかにも少年ジャンプらしいバトルもの。“イノセント”というアイテムを集 めていくというのも典型的です。ありきたりと言えばありきたり。
 しかし敵となる“AKUMA”の設定はなかなか良いです。大切な人を生き返らせたいという心につけ込 んで生み出される、死んだ人間の魂と生き返りを願った人間の皮で作られた心を持った兵器。悲劇の存在が 前提となる悲劇を演出するための設定には賛否が分かれるかもしれませんが、上手いと思います。しかし話 が進むにつれそのAKUMAの扱いがぞんざいになっていくのが残念なところ。

 といった感じに、話はまあそこそこでしたが、しかし5巻から6巻に渡るスーマンのエピソードにはして やられました。
 仲間を裏切り神の怒りを買い、“咎落ち”という前後の見境無く全てを破壊する化け物状態になってして しまうスーマン。後は死を待つだけのスーマンを必死に助けようとする主人公・アレン。少年漫画なら仲間 を売るようなキャラクターは殺して終わり、となりそうですが、予想外の方向に話が進みます。
 そもそもスーマンが仲間を売ったのは(故郷に残してきた家族に会いたいという動機を含んだ)“生きた い”という願望から。スーマンが生きるためには仲間を売るという選択肢しかないわけです。そこで少年漫 画的に「仲間のために死ぬべき」とはせず、“生きたい”という願望を最大限に汲み取る展開は驚きました 。
 ラスト、泣きながらアレンの手を口でくわえ必死で生き延びようとするスーマンはとても醜悪ですが、し かしとても人間らしい醜悪さであり、生きることに執着するその姿に不覚にも心打たれてしまいました。

 いろいろと不満な点はありますが、この作者は新人らしく、今後が楽しみです。