少年は成人よりも刑を重く?

市民の25%『少年は重く』(東京新聞)
「少年は重い刑に」が25% 最高裁司法研調査(Yahoo!ニュース)

 最高裁司法研修所のアンケートによると、約25%の人が殺人事件の被告の少年は成人よりも刑を重くするべきだと思っているようです。成人が懲役10年のところ少年なら20年、成人が無期懲役なら少年は死刑にってことですかね。…意味がわかりません。

 成人と同じ、ならまだわかりますが、なぜ成人より重くする必要があるのでしょう。こういったアンケートや世論調査を読み解く上で必要な詳細な設問や選択肢、回答者の選択方法が見つからなかったのである程度想像で書きますが、おそらく回答者は成人だと思います。もし成人に甘く少年に厳しく、なんて理由なら情けなさすぎますが、まさかそんなアホな人間はいないでしょう。いや、そう信じたい。そんな人間が「近頃の若いもんは」なんて言っている姿は想像したくありません。
 だとすると、成人が少年をとても危険な存在だと思っているから、くらいしか思いつきません(まさか25%全員が少年犯罪の被害者なんてことはないでしょう)。危険な少年は厳罰にして自分たちから遠ざけたい、と。
 もしそうなら、それはそれで情けないですね。統計上少年犯罪は減少傾向にあるにもかかわらず「少年犯罪が急増」とか「凶悪化する少年犯罪」とかいった報道を鵜呑みにして、現実に影響を与えかねないアンケートに答えているのですから。やはりこんな人間に「近頃の若いもんは」なんてことを言う資格はありません。

 マスコミは叩きやすい敵を作りたがります。少年に限らず、オタク・ニート・フリーター・外国人・元犯罪者(再犯の問題)・公務員、などなど。なぜ敵を作るのかはとりあえず置いておいて、こういった狙いにまんまと乗って少年を敵視する成人。マスコミが現実を作るなんて、筒井康隆の「48億の妄想」さながらの状況ですね。現実と虚構を混同しているのはいったい誰でしょう?

 ちなみに、私は可罰年齢引き下げなどの少年法の改正には反対です。
 少年法の主旨は大雑把に言えば、未熟な少年を守るためだと思っています。未熟だから更正の可能性は高いし、犯罪の原因における社会全体や保護者などの影響の割合も大きい。だから成人とは違った法が必要なのだと。
 もしその年齢を引き下げ、かなり低い年齢の少年も成人と同じ完成した人格として扱うなら、同時に選挙権も与え、酒や煙草や車の免許、エロなども認め(訂正:サンドイッチMENさんの指摘により精神的なことと身体的なことを区別するために削除します)るべきでしょう。一方では大人として扱い、もう一方では未熟な子供として扱うようなダブルスタンダードは認めたくありません。
 また、「統計がどうであれ少年に対する社会不安が増しているのは事実」というようなことも時々聞きますが、それならその事実こそを批判し、改善するべきでしょう。少年法の改正より、メディアリテラシーの教育こそが急務です。

参考リンク:
 少年犯罪データベース
 少年犯罪は急増しているか
 キレやすいのは誰だ(反社会学講座)
 少年犯罪は凶悪化しているか
 新・後藤和智事務所 〜若者報道から見た日本〜
 中年の心の闇〜大人たちに何が起きているのか〜(「いんちき」心理学研究所)