「バタフライ(1〜4)」の感想

 今日は最近買った漫画の感想をいくつかまとめて書こうと思ったのですが、その中で「バタフライ」という作品はちょっと簡単には語れないと感じたので、急遽独立したエントリーを。

バタフライ 1 (バーズコミックススペシャル)

バタフライ 1 (バーズコミックススペシャル)


 私は相川有という漫画家を「聖痕のジョカ」の頃から注目し追い続けているのですが、大塚英志が原作を担当していた当時よりも、単独で書いている今の「DAEK EDGE」や「バタフライ」の方が個性が際立っていて好きです。というか正直ここまで良い作品が書ける人だと昔は思っていませんでした(偉そうに)。

 この作家のどこが好きかと言えば、独特のノリです。話や設定は重いものばかりなのに、常にコミカルで軽やかで明るくてテンポが良く、そしてドライ。
 現在14巻まで刊行されている「DARK EDGE」は学園での血みどろの戦いが舞台なのに、日常的な学園生活や各キャラクター達のバカなやりとりが描かれています。戦いの場面でもどこか緊張感が薄く、悲しいはずの場面でもウェットさをあまり感じません。
 こう書くとつまらなさそうですが、なかなか他の作品では味わえない感覚で、この不思議なノリに一度ハマってしまうと病み付きになります。

 で、「バタフライ」ですが、ジャンルとしては一応“ホラー”だと思われます、自信はありませんが。主人公達が幽霊退治をする、と書けば“ホラー”そのものですが、この作品ではかなり初期のうちから「霊は存在しない」ということが明確にされています。ここがこの作品のキモであり特殊な部分です。
 毎回霊が登場しそれを主人公達が倒していくというパターンですが、その霊とは人間のイメージが生み出した虚構で、霊そのものよりも人間関係や死者との心理的な結びつきが話の中心になります。
 つまり“オカルトホラー”ではなく“サイコホラー”だと言えます。しかし特殊な状況での特殊な精神性を描いたものではなく、私達が普段抱くごく日常的な心理を描いています。そしてその日常的な心理がいかに不条理で不合理である種の危険性を孕んでいるか。身近なテーマだからこそジワジワとした怖さを感じます。

 さらにこの作品を独特なものにしているのは、とにかく“論理的”なことです。
 そもそも人間が現実だと思っているものは全て脳が認識しているだけのものであるとし、各話でも誰がどんな理由で霊をイメージしその存在を思い込むのか、そういったことが明確に説明されます。何も曖昧なままにせず、ひたすら論理的に謎を解いていきます。
 しかしあらゆる物を明確にしていくと、今度は虚構と現実の境というもっとも曖昧なものが浮き出てきます。この辺がこの作品の根本的なテーマだと思われます。というかタイトルは“胡蝶の夢”からとっているのでしょうね。こういうテーマは大好きです。

 …えー、やっぱりこの作品の魅力を文章で表すのは厳しいですね。いや、私の文才の無さという問題だけでなく。
 とにかく一度手にとって読んでみて欲しいのですが、確実に一般ウケしないのでお勧めもしにくいのが正直なところ。でも他に類を見ない種類の面白さなのは間違いありません。